linoleic acid リノール酸 cis-9,cis-12-octadecadienoic acid CAS No. 60-33-3 MW : 280.46 linolenic acid リノレン酸 cis-9,cis-12,cis-15-octadecatrienoic acid CAS No. 463-40-1 MW : 278.44 リノール酸、リノレン酸はともに炭素数18の不飽和脂肪酸である。 植物界に普遍的に存在する。 動物ではメチル末端から数えて3、6位(炭素数18の脂肪酸の場合、位置番号でいうと12、15位)に二重結合を導入することが出来ないため、リノール酸とリノレン酸は必須脂肪酸となっている。 ヒトでは必須脂肪酸としての効果はリノレン酸よりリノール酸のほうが優れているという。 メチル末端から数えて9位(炭素数18の脂肪酸の場合、位置番号でいうと9位)への二重結合導入は動物でも可能であるため、同じ炭素数18の不飽和脂肪酸であるオレイン酸(oleic acid)は必須脂肪酸とはならない。 → 代謝経路(ページ下部) |
リノール酸、リノレン酸以外の炭素数18の脂肪酸には下記のものがある。 |
ステアリン酸(stearic acid) octadecanoic acid CAS No. 57-11-4 MW : 284.48 |
オレイン酸(oleic acid) cis-9-octadecenoic acid CAS No. 112-80-1 MW : 282.47 |
ステアリドン酸(stearidonic acid, moroctic acid) cis-6,cis-9,cis-12,cis-15-octadecatetraenoic acid CAS No. 20290-75-9 MW : 276.42 |
不飽和脂肪酸豆知識 |
健康によいという食用油を販売しているサイトの説明によく出てくる言葉を集めてみました。 脂肪酸の構造を示して説明しているサイトはほとんどない上に、体に良いかどうかはともかく説明が科学的に見て誤っているサイトも少なくありません。 そんなわけで参考として作成してみました。 |
オメガ(omega、ω) オメガ3、オメガ6などと説明されている。 n-3、n-6 という表現と同じ意味。 オメガはギリシャ文字の最後の文字。 化学ではカルボキシル基の隣の炭素をアルファ、その次をベータ、ガンマ、…というように呼ぶ。 オメガとはカルボキシル基から見て一番遠い位置の炭素を便宜的に呼んでいるもので、メチル末端(カルボキシル基の反対側)のことである。 オメガ3というのはメチル末端から数えて3番目、オメガ6は6番目をいう。 化学でいう位置番号はカルボキシル基の炭素が1、それにつながった炭素以降は2、3、…と番号をつける。 |
アルファ−リノレン酸(α-linolenic acid、α−リノレン酸、ALA) cis-9,cis-12,cis-15-octadecatrienoic acid 必須脂肪酸。 通常単にリノレン酸という場合はα−リノレン酸をさす。 |
ガンマ−リノレン酸(γ-linolenic acid、γ−リノレン酸、GLA) cis-6,cis-9,cis-12-octadecatrienoic acid α−リノレン酸とは二重結合の位置が異なる。 γ−リノレン酸は動物でもリノール酸から作ることが出来るため必須脂肪酸ではない。 |
ジホモ−ガンマ−リノレン酸(dihomo-γ-linolenic acid、ジホモ−γ−リノレン酸、DHL) cis-8,cis-11,cis-14-icosatrienoic acid γ−リノレン酸に炭素が2個ついて炭素数20になったもの。 プロスタグランジンG1(PGG1)やアラキドン酸の前駆物質。 |
エイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid、EPA) cis-5,cis-8,cis-11,cis-14,cis-17-icosapentaenoic acid 炭素数20、二重結合数5の不飽和脂肪酸。 20を表す接頭語 eicosa- は旧称。 1979年に icosa- に変更された。 「エイコサペンタエン酸」は慣用的に使われているようである。 |
ドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid、DHA) cis-4,cis-7,cis-10,cis-13,cis-16,cis-19-docosahexaenoic acid 炭素数22、二重結合数6の不飽和脂肪酸。 |
アラキドン酸(arachidonic acid、AA) cis-5,cis-8,cis-11,cis-14-icosatetraenoic acid 炭素数20、二重結合数4の不飽和脂肪酸。 プロスタグランジン(prostaglandin)、トロンボキサン(thromboxane)、ロイコトリエン(leukotriene)の前駆物質。 |
プロスタグランジン(prostaglandin、PG) アラキドン酸から作られるエイコサノイド(eicosanoid)の一つ。 その名は前立腺(prostate gland)に由来するが、前立腺で作られているわけではない。 プロスタグランジンの基本骨格 例.プロスタグランジンE1 |
共役リノール酸(conjugated linoleic acid、CLA) 二重結合が共役系になったリノール酸。 共役とは炭素−炭素間の結合が二重結合−単結合−二重結合というように交互になった状態をいう。(二重結合だけでなく三重結合も含めて共役というが、脂肪酸の場合三重結合を持つものは例外的である) 共役リノール酸はリノール酸の異性化によって生じるらしく、異性化リノール酸とも呼ばれている。 ここでいう共役リノール酸とは cis-9,trans-11-octadecadienoic acid および trans-10,cis-12-octadecadienoic acid をいうらしい。 ダイエットに効果があるなどと言われているが詳細は不明。 元論文として次の論文が紹介されていた。 Conjugated linoleic acid supplementation for 1 y reduces body fat mass in healthy overweight humans Jean-Michel Gaullier et al. [American Journal of Clinical Nutrition, Vol. 79, No. 6, 1118-1125, June 2004] |
トナリン(Tonalin、トナリンCLA、Tonalin CLA) Cognis (コグニス)のブランド名。 つまりトナリンとは商品名であり、コグニス社製以外のトナリンはすべて偽ブランド品ということになる。 コグニスではトナリンCLA という共役リノール酸を販売している(直接販売しているかどうかは不明)。 コグニスが Tonalin CLA のサイトに記載している説明では、トナリンCLA とは紅花油(safflower oil)のリノール酸を共役リノール酸に異性化させたものとのことである。 「トナリン」をキーワードにして検索すると日本でもたくさん販売されているようであるが、ひまわり油と説明しているサイトが多いのは興味深い。 おそらく誰かが safflower (ベニバナ)と sunflower (ヒマワリ)を間違え、それを他の業者が検証もしないで真似たためではないかと思われるが定かではない。 日本法人はコグニスジャパン株式会社(Cognis Japan Ltd.)。 2004年3月よりコグニスジャパンはトナリンをメイプロインダストリーズと共同で販売していくことになったそうで、メイプロインダストリーズのサイトにはトナリンの説明が掲載されている。 |
代謝経路 各脂肪酸の流れをおおざっぱにまとめてみた。 リノール酸から左がオメガ6系、α−リノレン酸から下がオメガ3系となる。 動物には作れないリノール酸、α−リノレン酸が必須脂肪酸であることがわかる。 |